上級編って何をやるの?

さて、今回からいよいよ上級編だね。



上級編ってどんなことをやるの?



実はね、初級・中級・上級はそれぞれテーマがあるんだ。
初級編のテーマは「どんなレンジで戦うべきか」だよ。特にプリフロップのオープンレンジ・コールレンジなんかだね。



ふむふむ。



中級編のテーマは「相手のレンジを考える」だったんだ。
レンジのヒントやボードテクスチャから相手のレンジを考えて、自分のハンドの強さ(エクイティ)を測ろう!というのがメインテーマだね。



ああ、そういえばそうだったね。



そして上級編のテーマは「相手から見た自分のレンジを考える」だよ。
上手いプレイヤー同士が戦うと、お互いが相手のレンジやエクイティを考え始めるんだね。そこで大事になってくるのが相手から見た自分のレンジなんだ。
例えば、この状況で相手から見た自分のレンジはとても強いから、自分のブラフは成功しやすいだろうとかね。



おお、確かにだんだん高度になってる気がするね。



うん、よりメタな考え方になっていくんだ。
そしてその一つの終着点がゲーム理論(GTO)だよ。お互いのプレイヤーが相手のレンジ・エクイティ・ポジション・スタックサイズを十分に考慮してより有利な戦略を使おうとすると、お互いにこれ以上戦略を変えようがないところまできちゃうんだね。また超上級編(GTO編)で解説するよ。



なるほど〜。今回はどんなことを話してくれるの?



今回は「相手から見た自分のレンジを考える」の最も基本的なパターン、ポットコントロールとディレイCBについて解説するよ。詳しくは次の章で!
ポットコントロールとは?



まずはポットコントロールについて説明していくね。チンアナゴちゃんは聞いたことある?



ないかなあ。どういう意味なの?



ポットコントロールのもともとの定義は「ポットを小さくしてローリスクでショーダウンを目指すこと」なんだ。
中でも特に「フロップやターンでショーダウンバリューがあるとき、ベットせずにチェックすること」をポットコントロールと呼ぶことが多いよ。



ショーダウンバリューがあるってことは、真ん中ぐらいの強さ(マージナル)ってことだよね。そのときにチェックする、か。何か具体例が欲しいかも。



OK、こんなのはどうかな。





HJからAQoでオープンして、BBだけがコール。見てのとおり、フロップでミドルペアができたよ。



ほんとだ。それで、BBがチェックしたところなのかな。



うん、そうだね。チンアナゴちゃんがHJだったらどうする?ベット?チェック?



うーん、相手(BB)のレンジと比べて私のAQってどのくらい強いんだろう。それがわかんないと、正しいアクションもわかんないよ。



そうだね。まさに中級編で解説したハンドの強さを測ろうってことだよね。じゃあ、今回はボードテクスチャを使ってAQの強さを測ってみようか。



オッケー。



KQ4はそこそこドライなボードだね。ドライなボードのときは「まあまあのキッカーのセカンドペアが真ん中の強さ」だよ。覚えてるかな。



うん、ボードテクスチャの記事で言ってた気がする。



もしBBがタイトなプレイヤーでないならば、って条件つきだけどね。



じゃあ、AQはキッカーが強いセカンドペアだから・・・真ん中より少し強いくらい?



うん、僕もそう思うよ。大体65%くらいの勝率なんじゃないかな。



じゃあ、AQでバリューベットを打っちゃう!BBは弱いQのペアかもしれないし、ストレートドローかもしれないしさ。



そう、それが中級編までのレンジとエクイティを使ったやり方だったんだね。
でも、ポットコントロールの考え方からいくと、ここはチェックなんだ。



あらら。どうしてなの?



実はこのBBは相手のレンジを考えてプレイできる上手いプレイヤーなんだよ。
だから、もしBBがQTなんかの弱いQを持っていたとしても、フロップ・ターン・リバーの3ストリートでバリューベットにコールしてくれそうにないんだ。



あ、BBから見たHJのレンジが強そうだから、途中でフォールドしちゃうってことか。



うん、そうだね。HJがオープンしたレンジはとても強くて、AA・KK・QQ・AKなんかの強いハンドが入ってるからね。逆にプリフロップで3ベットをせずにコールドコールしたBBのレンジには、そういう強いハンドは入ってないんだ。



うんうん、そうだよね。



改めてHJの視点に戻ろうか。HJはセカンドペアで3回バリューを取ることが難しそうなんだ。それならフロップはチェックしておいて、ターン以降で2回バリューを取るプランのほうがいいかもしれないよ。
それにフロップでチェックすると、ターンでBBはブラフを打ってくれるかもしれないから、それにコールすれば得だしね。



BBがターンでブラフを打つハンドって、どんなのがあるの?



色々あると思うよ。BBはJTとかATみたいなストレートドローでブラフするかもしれないし、もしかしたら87sみたいなエアーかもしれない。
なぜなら、BBから見たHJがチェックするレンジには99、A4sみたいな弱いペアが入ってるからね。そういうまあまあのエクイティがあるハンドをBBはブラフで降ろしたいんだよ。



ふむふむ、セカンドペアで3回バリューが取れない、チェックすればBBはブラフを打ってくれるってのがポイントなんだね。
でもさ、相手がドロー系のハンドを持ってるなら、やっぱりフロップでベットしたくなっちゃうよ。ダメなの?



ドローに対するプロテクトベットってことだよね。そのベットにBBがコールとかフォールドをしてくれたらいいんだけどね、レイズされるとAQのHJはキツイよ。



BBがチェックレイズしてくるかもってこと?



うん。例えばプロテクトベットに対してBBが3、4倍のサイズにチェックレイズすると、セカンドペアのHJはコールすることができないんだ。



ふーむ、コールするとどうなるの?



それだとBBはセミブラフだけじゃなくてツーペア、セット、TPGK(トップペア・グッドキッカー)なんかのハンド混ぜてチェックレイズをする戦略が取れるんだ。そうすればHJからかなり大きなバリューが取れるよ。
つまり、HJはマージナルなセカンドペアでCBを打ったり、さらに相手のチェックレイズにコールするのはやりすぎなんだ。相手のチェックレイズ戦略にアジャストされちゃうんだね。



そっか、CBの記事で言ってたね。CBの打ちすぎはレイズに弱いって。



そうなんだよ。このCBの打ちすぎとチェックレイズの話は大事だよ。
そうだ、せっかくの上級編だし、エクイティとEV(期待値)の観点からも今の話を説明してみようかな。



ほほう、エクイティとEVというと?



セカンドペアみたいなマージナルなハンドはね、そもそもチェックしたときにもある程度のエクイティがあるんだ。



うんうん。



でも、そこで特にIPからベットしてしまうと、OOPの相手にレイズする権利を与えてしまうんだ。そうすると、レイズされたときに自分が持ってるエクイティを捨てなきゃいけなくなるんだね。
だから、エクイティがそこそこあるからといって常にベットしていると、相手の有利な戦略にアジャストされてしまって、結果的にEVがマイナスになってしまうんだよ。



えーっと・・・エクイティがそこそこあるからといって常にベットしてると、レイズとかに降ろされちゃってそのエクイティがパーになるから、期待値的にはマイナスってことか。



そういうこと!中級編はレンジとエクイティの話がメインだったけど、そればっかりやってると上手いプレイヤーに読まれてアジャストされちゃうんだね。



うーん、難しいゲームだなあ。結局ポットコントロールって一言で言うと、どういうことなの?



うん、じゃあ次の章でポットコントロールの総まとめをしようか。
レンジを広く保つ:ポットコントロールの極意



さて、前の章ではポットコントロールについて具体的なシチュエーションを引き合いに出して説明してみたよ。
ここでは「ポットコントロールって結局何なの?」とか「いつ、どんなときにポットコントロールをすればいいの?」なんかのもっと一般的な話をしてみようかな。



うん、それ知りたい!



ポットコントロールを一言で言うとね、チェックするレンジを広く保つことで、相手に簡単にアジャストされないようにするテクニックなんだ。



チェックするレンジを広く保つ?



うん、つまりね、すべてのペアやドローでベットしてると、自分のベット頻度が高いことが相手にバレちゃって、相手に簡単にアジャストされるんだ。



ああ、さっきの章の話だと、ベットしすぎはチェックレイズで対応されちゃうってことなんかな。



うん、そのとおりだね。あと、ベットせずにチェックしたときもマズい展開になるよ。だって、すべてのペアやドローでベットするプレイヤーがチェックしたってことは、ほとんどエアーしか持ってませんって宣言してるようなもんだからね。



た、確かに。エアーしか持ってないプレイヤーにはベットすればいいだけだもんね。



そう。ベットしようがチェックしようがアジャストされてしまうんだよ。
じゃあどうするかというと、そこそこのエクイティがあるハンドやすごく強いハンドをチェックに回せばいいんだね。



例えばどういうハンド?



そこそこのエクイティがあるハンドは弱いペアとかAハイ、すごく強いハンドはドライなボードのトップセットなんかだね。もちろん、すごく弱いエアーでもチェックすることもあるよ。



ふむ、強いハンド=ベット・弱いハンド=チェックっていうふうに分けずに、いろんなハンドをチェックするレンジにバランスよく混ぜておくってことか。



まさにそういうことだよ。そうすればアクションや頻度からアジャストされにくくなるからね。
「そこそこエクイティがあるハンド」をチェックに回すことをポットコントロール、「すごく強いハンド」をチェックに回すことをスロープレイっていうんだ。



なーるほど!



相手から見た自分のチェックするレンジを広く保つ
=そうすると相手は簡単にアジャストすることができない&次のストリートで相手のブラフをキャッチできる
=結果的にセカンドペアみたいなハンドのエクイティが実現しやすくなる
これがポットコントロールだよ。



ふむふむ。それは確かに上手いプレイヤーに対して効きそうだね。



ついでに言えば、チェックすると相手はレイズする機会を失うわけだから、結果的にポットは小さくなりがちだよね。だからマージナルなハンドで大きなポットに参加してコミットしないようにすることもポットコントロールの目的の一つだね。



ねえ、どんなときにポットコントロールって狙えばいいの?



OK。じゃあポットコントロールのチェックリストを作ってみようか。次の項目に当てはまるような状況はポットコントロールがおすすめだよ。
- 自分のハンドはマージナル(勝率が40%〜60%あたり)である
- 自分はIPである
- 3ベットor4ベットポットなのでSPR(スタックとポットの比)が小さい
- 比較的ドライなボード、あるいは相手のレンジにドローが少ないことがわかっている
- 相手はほかのプレイヤーのレンジや自分のハンドのエクイティを考えられるプレイヤーである
- 相手はアグレッシブなプレイヤー(ベットやレイズが多い)である



こんなところかな。六つ全部当てはまらなくてもいいよ。四つか五つ当てはまればポットコントロールが正解になることが多いんじゃないかな。



最後の「相手がアグレッシブなプレイヤー」ってのはどうして?



ポットコントロールせずにベットしてると、アグレッシブなプレイヤーからチェックレイズが飛んでくるからだよ。チェックレイズにコールして、ターンでもベットを打たれて・・・ってのは嫌な展開だよね。相手が上手いプレイヤーじゃなくても、思考停止でアグレッシブにベットやレイズをされるだけでキツいんだよ。



うーん、それは確かに嫌だね。



それならフロップはポットコントロールでチェックして、ターンとリバーでアグレッシブなプレイヤーのブラフをコールしたほうがよさそうだよね。



うむ、確かに。



ただし、相手がコーリングステーションなら別だよ。ドロー系のハンドや弱いペアで何度もバリューベットにコールしてくれるなら、それはポットコントロールをする必要はないからね。素直にベットするのがいいと思うよ。



ということで今日のまとめッ!
今日のまとめ
- 上手いプレイヤーと戦うときは「相手から見た自分のレンジ」を考えよう!
- ポットコントロールは「自分のチェックレンジを広く保つこと」。そうすることで相手にアジャストされにくくなるんだ
- いつ、どんなときにポットコントロールをするべきかのチェックリストを作ってみたよ



次回はポットコントロールの番外編・ディレイCBについて解説していくよ。
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